長距離無線を利用した農業IoTの導入事例

長距離無線を利用したトマト栽培の可能性を追求するため、北海道蘭越町の「近藤ふぁーむ」様にご協力いただき、2018年5月~9月の期間、農業IoT(データ収集)実験の事例をご紹介します。
トマトの年間収穫量を上げる重要なポイントは、根の成長です。
しかし、春先の北海道は土中の気温が上昇しにくい上、昨今の不安定な気象では、地中温度管理が重要となるトマトの根が成長できず、大量廃棄をせざるを得ないという現状があります。

ハウス内に設置したセンサー
▲パイロットエリアを決めてセンサーを配置・925MHz送信機はハウス内に設置
スマートフォンでデータをリアルタイムで監視
▲手元のスマートフォンでリアルタイムで監視

そこで、気象に左右されず、安定したトマトの収穫量を確保するため、アビルヒーター*を使用し、一定間隔でヒーターを土中に埋め込みます。アビルヒーターを使用することでボイラー方式よりも効率良く地中を直接温める方法を実施しました。アビルヒーターの電気代はボイラー方式に比べて60%~80%もの削減ができます。

ハウス内と土中の気温、湿度は、EnOcean長距離無線を用いて、リアルタイム監視と温湿度データを時系列に記録し蓄積します。モニタリングは、WAGO社のコントローラ経由の3G回線で、リアルタイムに行い、手元のスマートフォンで監視することができます。

苗を植えた直後の育成期間においては、苗が成長しているように見えても地中の根が深刻な不具合を起こしている可能性もあり、地中温度管理は重要なポイントとなります。また、急激な温度変化が発生した場合は緊急処置がとれるようリアルタイム性も重要となります。

アビルヒーターを入れた土中温度は、安定して+2℃~+3℃高く保たれ、北海道の夜間の冷え込みの影響を受けず、土中の養分を適切に吸収できた根が充分に成長して根付きました。そのため天候がすぐれなかった2018年9月でもトマトの収穫量が30~40%増加しました。

アビルヒーター導入による根の成長度合い
▲アビルヒーター導入による根の成長度合い

農業IoTをはじめ長距離無線やアビルヒーター等の技術の導入により、農業IoTの可能性が広がります。本事例は、「EnOcean Alliance Journal2019」(p.48~50)にも掲載されました。


*アビルヒーターは泉州電業株式会社の製品です。製品詳細は下記カタログをご覧ください。